売り

ヴァリス2の売りにオープニングが喋る、というのがあった。
主人公のフルネームは「麻生優子」に決まった。
これは企画のAKさんが決めた。
AKさんはこの会社で数多く企画を担当していた人で
シナリオ書きに長けていた。AKさんもヴァリス2を最後に退職している。
優子の声を担当したのはSSさんという、当時人気のあった声優さんだった。
SSさんともう一人の女性の声優さんと二人の掛け合いだった。
PC8801SRの後継機種で音声が再生できるのだが、
この音がAMラジオより落ちる音質で
二人の女性声優の声が聞き分けられなくて、一人芝居のように聞こえた。

しゃべりはオープニングに限られたが、それでも当時としては画期的だった。
これに三重スクロールのアクションゲームと豪華なビジュアルシーンが入って
七枚組になっていたので話題性は充分だった。

これは他の開発班の羨望と嫉妬の種にもなったかもしれない。
当時の新開発のTOWNSという機械を担当している班があった。
まだ発売されていない富士通のパソコンでCD−ROMを初めて標準装備した
画期的なパソコンだった。
これに比べればPC8801SRは貧弱だった。
TOWNSの開発班はテレビアニメで使う背景や原画を取り込む手法でゲームを作っていた。
TOWNSの発売元である富士通はソフトとの同時発売を目論んでいた。
ゲームの開発期間は三ヶ月くらいしか残っていなかったのだ。
プログラマは開発機材がうまく動かないので1Gバイトのハードディスクに
足蹴りをしていた。
マシンが良くても、内容を磨き上げる時間が無いので
デザイナーも半ば投げやりになっていた。
その向かいで、当初二匹目のドジョウ的ゲームが、豪華になっていくのを見て、
歯がゆかったかもしれない。

つぎ

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