No.7 それは鼻水のようなもの
 
バスルームから湯をかける音が聞こえる。
涼子さんは裸で入浴している。
僕は涼子さんの裸を直接見ることは出来ない。
美人の裸は見てみたい。
写真集ではなく目の前で。
 
テレビでサムを見かけるたびにアムロちゃんとどんなきっかけで
結ばれたのかと考えてしまう。
ダンサーと歌手はふれあうほど近いんだ。
僕と涼子さんだってふれあうほどに近い距離だ。
 
今の僕にはそれが出来るはず。
けれどバスルームの扉を開けたらすべてが終わる。
それはもったいないよ。
 
涼子さんの胸のとがった部分はどんな色をしているんだろう。
 
僕はパンツを脱いだ。
僕の相棒は心臓の鼓動を刻むように興奮して動いている。
 
ベッドのシーツがお尻に気持ちいい。
 
涼子さんの胸のとがった部分はどんなふうなの?
 
試験管の口を先にあてて、いつものように刺激してみる。
 
涼子さんは胸を洗い、大切な部分を洗い、それは僕のすぐ側でしているんだ。
口実を作って見てみようか。
ダメだ、そんなことしたら涼子さんに怒られる。
 
「めがねくん」
「はい」
「私の部屋に石鹸あるから、もってきて」
「はい」
 
涼子さんの部屋はちょっといい匂い。
家具と化粧品の匂いだ。
僕は薔薇のベッドの上にある石鹸を手に取った。
僕は相棒に石鹸のにおいを嗅がせた。
 
「早くして」
「はい」
 
僕は石鹸を持ってバスルームの扉の前に立った。
 
「あった?」
「ありました、どう渡します?」
「ちょっとまって」
 
バスルームの扉が半開きになり涼子さんが顔を覗かせた。
僕は反射的に身を壁際に隠した。
僕が恥ずかしがってどうする。
 
「ありがとう」
「どういたしまして」
「めがねくんも一緒に入る?」
「あ、僕はやることが、あるんで」
「あ、そう」
 
バスルームの扉は閉まった。
僕のばかばか馬鹿ぁー!
こんなところで紳士の判断してどうするんだー。
 
脱衣のカゴに涼子さんの下着がある。
ああ、ダメだ。僕は下着では興奮できない。
実物が見たいよ。
 
「早くあっちいってよ、ヘンタイ」
「はい」
 
少し萎えた気がした。
僕はベッドに座り、試験管を相棒の口にあてた。
 
「見てもいい?」
 
湯上がりの涼子さんだ。
涼子さんはスエット姿で僕の横に座った。
僕はさらしものだ。
 
「恥ずかしいじゃないですか」
「私の方が恥ずかしいのよ」
 
涼子さんは僕の両肩に腕を回して、相棒を覗き込んだ。
 
「かわいい」
「ええ…?」
 
涼子さんの胸の先が僕の背中に「の」の文字を描く。
僕の脊髄に電気が走る。
 
「感じる?」
 
これじゃ男女が逆じゃないか。
石鹸とお湯の匂いと涼子さんの胸のぬくもりで僕は役目を果たした。
 
涼子さんが、かざした試験管の中身は鼻水のようで
まるで汚いものにしか見えなかった。
でも、涼子さんは真剣にそれを見ている。
珍しい?
 
つづく
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