No.2 お父さんが訪ねてくる

僕は組立式の机を組んでいた。
パソコンを乗せるためのものだ。
パソコンはSMAPだってCMやっている。
僕は根暗なオタクなんかじゃないぞ。
この部屋だっておしゃれなフローリング、
マホガニー調なんだから。
バスルームの方から水音が聞こえる。
 
「凄い、お湯が出る!」
 
このマンションは水回りが広く
トイレと洗面台と風呂が別々になっている。
ユニット式だけれど新しいバスルーム。
涼子さんはお湯の出る蛇口をいじる。
 
「ねえ、お湯が出るよ、お湯」
「涼子さんの実家だって立派な家じゃないですか」
「ここで出るのが凄いじゃない、
 ボロマンションだと思っていたから、
このマンションは当たりだよね」
「今夜はお風呂、入れますね」
「めがねくん、いま入ってくれない?」
「でも、引っ越しの荷物をほどかないと」
「トラックとか乗って、汗くさそうじゃない、
ちゃんと清潔にしないとイヤだからね」
「涼子さんは、どうします?」
「私はあとでゆっくり入りたいから、早くして」
「本当に今、入るんですか?」
「ちゃんと石鹸つかうのよ」
 
涼子さんは僕を残して自分の部屋へいってしまいました。
さてと。
僕は服を洗面所の床へ脱ぎ捨て、裸になった。
バスルームには石鹸もタオルもないけれど、
シャワーを浴びた。
これも作戦だ。
裸で涼子さんを呼べる、口実になるから。
 
「ピンポーン」
呼び鈴だ。
 
僕はシャワーを止めた。
 
涼子さんが鍵を開ける音が聞こえる。
涼子さんのお父さんの声だ。
 
「涼子、戸を開けるとき、のぞき穴を見ているか?」
「なんで?」
「誰が来るか、わからないだろう」
「判るよ、お父さんじゃない」
「ここら辺は物騒らしいじゃないか、
一階のオートロックだって開けっ放しだ」
「なに持ってるの?」
「カップ、一個百円だった。安いだろう?」
「なんでそんなもん買うの?」
「安かったからだよ」
「いらないよ、そんなカップ」
「じゃ、いいよ持って帰るから」
「紙コップでいいのに」
「紙コップはなぁ、資源のムダなんだよ!」
「大きい声!近所迷惑」
「めがねくん、あいつはどこだ」
「お風呂」
 
僕の準備が出来ないうちに、
バスルームの戸が開いた。
 
「おう、めがねくん、気が早いな」
「どうも、こんにちは」
「涼子は風呂、入らないのか」
「私は荷物をほどいているから、忙しいの」
 
お父さんは突如、僕のおちんちんを握りしめ、
僕は凍り付いた。
 
「めがねくん、皮の内側まで良く洗っておくんだ」
「はい」
「涼子のこと、よろしく頼んだよ。急いでるんだからね」
「はい」
 
つづく
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